カギカズラ

2013.6.29 鴨川市
2013.6.29 鴨川市

房総半島を北限としている植物は数多いですが、このカギカズラもその1つ。

東南アジアを中心に分布しているアカネ科カギカズラ属の植物で、カギカズラ属では、日本に唯一分布している種です。
千葉県内で見られる場所は清澄周辺と長南町の2箇所と、分布はとても限られています。

2013.6.29 鴨川市
2013.6.29 鴨川市

カギカズラの花は、多数の小花が集まった球状の頭状花序をつけるのが特徴。
花冠は浅く5裂し、やや黄色味を帯びた緑白色で、基部は淡赤褐色をしています。
先端が棍棒状となっている雌しべが花冠の外に長く突き出ています。

2013.6.29 鴨川市
2013.6.29 鴨川市

名前の由来は、葉腋に見られるこの湾曲した鋭い”鈎(かぎ)”。これは、側枝が変化したものです。
この鈎で他のものにからまって伸長し、大きい個体では10m以上にもなります。

この”鈎”は、漢方では”釣藤鉤(ちょうとうこう)”という名前で知られ、鎮痙剤や鎮痛剤として利用されてきました。
近年では血圧を下げる効果があることが報告され注目されているそうです。

※撮影の際には、開花状況等の情報を内浦山県民の森のYさんにご教示頂きました。
ご丁寧に対応して頂き、本当にありがとうございました。

ウスヒラタケ

2013.10.6 南房総市
2013.10.6 南房総市

幹の途中から伐採され、そのまま放置された枯死木に発生したウスヒラタケ。

傘の色は淡い灰褐色〜黄色。
また、中心からややずれた位置に短い柄をつける(偏心生)のが特徴。

木漏れ日がちょっとさす程度の薄暗い林内という発生環境の様子、キノコ本体の傘の表面や傘の裏側のヒダの様子がつかめるように撮影しました。

ビロードテンツキ

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

カヤツリグサ科のテンツキ属の1種。ビロードテンツキ。
根茎が横に短く這い、高さ10~20cmと低い草丈です。

館山市内の生育地の1つは、海浜よりも内側に入った海岸砂丘の半安定帯の中にあります。
このビロードテンツキが優占する場所にはニッポンハナダカバチの営巣も見られます。

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

茎や葉にはビロード状の毛が密に生えています。これが名前の由来。

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

9月から10月にかけて、3~10個の小穂を頭状につけます。
広卵形の鱗片にも短毛があります。

ツマグロキンバエ

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

オミナエシの花にやってきたツマグロキンバエの雌。

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

本種の特徴は、複眼のなかにある縞模様。
なぜこのような模様が見られるのか、非常に不思議です。

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

口吻を伸ばした状態。先端部分に細毛が見られるのがわかります。

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

この伸ばした口吻をオミナエシの小花の内部へと差し込み、さかんに蜜をなめていました。

オミナエシ

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

秋の七草として知られているオミナエシ。
近年は生育場所である草地の減少にともなって、このような群落が見られる場所も減ってきました。

遠くからでもよくわかる鮮やかな黄色の複集散花序を形成します。秋の風情を感じる色合いです。

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

その花序を形成している小花を拡大したもの。大きさは4mm程度。
黄色の花冠は5裂して、独特の質感があります。
筒状になった部分の内部には細毛が密生しているのがわかります。

キンパラナガハシカ

2013.10.3 館山市
2013.10.3 館山市

林の中で見られる蚊の仲間の1種。竹の切り株などから主に発生します。

フサフサしている触角の形状からオスであることがわかります。
ですので、この個体から血を吸われる心配はありません(血を吸うのはメスだけなので)。

複眼の後ろにある、鮮やかなブルーのラインが非常に美しく、目を引きます。

イチジク

2013.9.23 南房総市産
2013.9.23 南房総市産

イチジクの旬の時期になりました。上品な甘みとネットリとした食感がいいですね。

食べる前に果実の断面を見てみましょう。

白い部分は花序軸が多肉化した部分。花序の中央部が凹んで壺状になっており、そこに多数の小さな花をつけます。上の写真では、赤い部分がその花が熟した部分です。
このようなタイプは、イチジク属に特異なもので、イチジク状果(synconium)と呼ばれます。

2013.9.23 南房総市産
2013.9.23 南房総市産

内部を拡大してみます。ニョロニョロのように見える部分1つ1つが花の熟した部分。先端付近に黄色いゴマ粒のような痩果が見えます。

たくさんの花が集まって熟した果序があたかも1つの果実のように見えているわけです。

底面の中央付近には小さな孔が開いており(上の写真の左端)、この孔を通って小さなハチ(イチジクコバチ)が中へ入り受粉を助けることがよく知られています。日本の栽培品種はすべて雌株で自家結実性があるので、このイチジクコバチによる受粉は行われていないのですが。

ちなみに、このイチジクはこの後、イチジクのタルトに調理してもらいました。美味。美味。
生食もいいですが、加工した方がイチジクの美味しさがひきたつ気がします。

コガシワ

2013.9.19 南房総市にて採集
2013.9.19 南房総市にて採集

コナラとカシワの雑種の”コガシワ”。

嫁さんが海岸近くの公園で見つけてきてくれた標本を、撮影台でマクロ撮影しました。

まず、殻斗に注目してみます。
カシワの殻斗の総苞片は長く、その先が反り返りますが、このサンプルではそうなっていません。
殻斗の総苞片が瓦重ね状に圧着するコナラとのちょうど中間的な特徴を示しています。

果実もちょっと細長い丸型で、これもカシワとコナラの中間的な形です。

千葉県では、房総半島南部の海岸地に、このコガシワが分布していることが報告されています。