E-M1の微ブレ問題

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珪藻写真など、非常に細かな微細構造を有する被写体を撮影していると問題になってくるのが、”微ブレ”(非常に小さなブレ)の問題。カメラをしっかり装置に固定しても、カメラ内部の機構から生じる微ブレがあるのです。

通常の一眼レフを用いた撮影の際にまず問題となるのは”ミラーショック”。
一眼レフではカメラのファインダーに像を送るためのミラーがシャッターの前に据えられています。シャッターボタンを全押しすると、このミラーが跳ね上がり、レンズを通った光はシャッターを通ってイメージセンサーへ進み画像が記録されます。
このミラーが跳ね上がる際に生じる振動が”ミラーショック”。
このミラーショックが与える影響は非常に大きいです。中級機以上の機種では、このミラーショックを低減させるために、あらかじめミラーを跳ね上げさせ、振動が収まった頃にシャッターを切る”ミラーアップ”機能を搭載しています。

しかし、今、メインで使用しているE-M1は、ミラーレス機。
この振動を生じさせるミラー自体がそもそもないのです。つまり、このミラーショックは皆無。これで一気に問題は解決といいたいところですが、そうではありませんでした。

詳細に珪藻画像を検討してみると、低速シャッター(1/10秒以下)では、微細構造がしっかりと解像されているのに、それ以上になるととたんに画像にブレが生じるのです。
珪藻写真を等倍に拡大して見ての話なので、気にならない人は気にならないでしょう。ですが、ギリギリの条件を追い詰めていくとなると話は別で、この程度のブレでも大問題。
手ぶれ補正機構とフォーカルプレーンシャッターユニットの2つが微ブレの発生源として上げられていますが、まだ原因は特定されていません。

現在は、微ブレが生じない以下の撮影条件を満たすようにして、何とかしのいでいます。

  • レリーズタイムラグを”ショート”に設定
  • ランプ出力やISO感度を調整して、1/10秒以下の低速シャッター時に最適露出となるようにする

E-M1の手ぶれ補正は非常に強力で、野外での撮影ではその恩恵を多大に受けています。ただ、一方、このような微ブレの原因の1つになったりもするので、もどかしいところです。

直焦点撮影を試す

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コリメート法と直焦点法

顕微鏡撮影を行う場合、コリメート法と直焦点法という、2つの方法が主に用いられます。

これまでにこのブログで紹介したきた画像は、すべて”コリメート法”で撮影したものでした。

では、そのコリメート法とはどのような方法なのでしょうか?
コリメート法と聞くと、ちょっと難しい名称に聞こえますが、撮影するのは比較的簡単(といっても凝りだすと、奥深いポイントがいくつもあるのですが)。

顕微鏡に人間が覗く時に使用する接眼レンズを普通に取り付け、人間が覗く代わりに、レンズをつけたカメラを据え付けて撮影します。
接眼レンズとセンサーの間にカメラレンズがあるために画質が劣化するのが、このコリメート法の欠点の1つ。

一方、直焦点法とはどのような方法なのか?

直焦点法では、通常の接眼レンズの代わりに専用の写真撮影レンズを取り付けます。その写真撮影レンズの上に、カメラ本体を直に据え付けます。つまり、デジタルカメラのセンサー自体に結像させて撮影する方法です。

直焦点法におけるカメラ位置の調整

直焦点法の場合には、カメラ側のレンズでピント調整をすることが出来ないため、カメラセンサーを光学的に最適な位置に持ってくることが非常に大切です。mm単位の調整作業を伴います。
この時に活躍するのが、カメラのライブビュー機能と珪藻プレパラート。ライブビューで拡大表示しながら、珪藻プレパラートの微細構造を観察し、カメラの上下させながら、最もクリアに見える位置を探っていきます。

この調整には、これまでコリメート法で撮影してきた経験が非常に役立ちました。この照明方法なら、この珪藻の微細構造が見えるはずという1つの基準ができてきたので、確実に作業を進めていくことができました。

直焦点法による画質の向上

結果は上々で、撮影画像のクリアさが増加しました。
クモノスケイソウの被殻の立体的な微細構造に魅了されます。

ただ、コリメート法が大幅に劣るというものでもありませんでした。
今後は、視野全体の様子をとらえる場合にはコリメート法で、視野の中央部付近だけをクロップして、最良の画像を求める時には直焦点法といったように、使い分けていく予定です。

初めての液浸

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コンデンサ側だけですが、初めて液浸検鏡をしてみました。
乾燥系の開口数が0.95の対物レンズを使用しているので、イマージョンオイルではなくグリセリンを用いました。

珪藻はクモノスケイソウ(Arachnoidiscus)。照明は輪帯照明。コリメート法での撮影です。

実は、できるだけプレパラートをきれいな状態に保ちたくてなかなか挑戦できませんでした(本末転倒もいいところですね)。

液浸検鏡をした感想ですが、微細構造のクリアさ、立体感がまったく違います!
検鏡後の拭き取りも予想以上に簡単でした。

今後は、ここぞという時には、コンデンサ側だけでも液浸を試していきたいと思います。

驚くべき輪帯照明の効果

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顕微鏡撮影の照明を偏斜照明から変更して、輪帯照明を試してみました。珪藻は、Biddulphia属。

使用している顕微鏡がニコンS型なので、フィルター受けの上に丸い遮光板を置きました。MWSさんのサイトで紹介されていた方法です。

この輪帯照明の効果は非常に大きいです。

上の画像を見ると、微細構造はさることながら、ガラス質の被殻の質感や立体感が出ています。
この輪帯照明で撮影された画像を見てしまうと、今までは、珪藻の微細構造が”模様”として見えていただけという感じがしてしまいます。

単色光と長時間露光の効果

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今季の冬の重点テーマは”顕微鏡の撮影技術の向上”。

顕微鏡で微細な構造を写し止めるためには、主に4つの分野に分かれた複合的な技術を磨かなければなりません。

  1. プレパラートの作成
  2. 顕微鏡の検鏡
  3. カメラの撮影
  4. 画像処理

完全に調整されたMWSさんのプレパラートを用いることで、2番目、3番目の顕微鏡とカメラの問題を1つずつ潰していく方針です。

使用している対物レンズは、Nikon Plan Apo 40x (NA=0.95)。乾燥系でどこまで迫れるのかのチャレンジです。

まずは、モノクロ撮影。
顕微鏡では、フィルターを用いて緑色の単色光で偏斜照明します。
カメラ側は、1秒程度の長時間露光で撮影します。フォーカルプレーンシャッターもしくは手ぶれ補正機構ユニットに起因すると思われる”微ブレ”を軽減させるための対処策です。
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得られた画像です。
四角形のTrigonium属の先端部分付近です。
先日の画像では、微細構造が点状にしか見えていません。
一方、今回得られた画像では、この先端部分付近にびっしりと小孔が配列している様子がははっきりわかります。

まだ、画面のざらつきが気になりますが、概ね満足する画像が得られました。
緑色の単色光と長時間露光の2つの効果は予想以上に大きいです。